CHA × ENSHU
遠州は、お茶作りの産地として豊かな風土に支えられ、日本一の大茶産地となる基盤が作られ、
現在では生産額・品質はもとより、流通面においてもわが国茶業の拠点となっています。
ひとくくりに遠州のお茶といっても、掛川・牧之原の深蒸し茶、遠州北遠の天竜・春野の浅蒸し茶、などのさまざまな土着のお茶があります。

お茶栽培に適した豊かな自然
温暖な気候と適度な雨量、なだらかな傾斜地の多い地形など、掛川市は茶の生産に適した自然環境に恵まれています。このような好条件を活かして市全体の面積の約1割にあたる2,360haの畑で茶が栽培されています。掛川で茶の栽培が始まったのは400年前と言われています。

美味しいお茶を求めて努力を続けてきた農家や茶師の思いと工夫が作り出した「深蒸し茶」は、今や日本国内において広くその名を知られるようになりました。掛川で生産された茶は日本国内で最も権威のある茶の品評会「全国茶品評会」において「産地賞」を10年連続を含め20回も受賞するなど、日本国内で最高の品質の高さを誇ります。

掛川市内の東部地域を中心に「茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)」と呼ばれる独自の伝統農法によりお茶の栽培が行われています。茶畑の周りに点在する草地(茶草場)からススキやササなどの草を刈りとって、秋から冬にかけて茶畑に敷く農法です。この農法で作られたお茶は味や香りが良いことで高い評価を得てきました。茶畑に敷かれた茶草は土壌を豊かにし、土壌の流出防止などの効果から、この地域の茶栽培に欠かせないものであるとともに、豊穣祈願のお供えとして地域の伝統文化のなかにも利用されています。また茶草を刈り取ることで維持されてきた草地には希少な生物が数多く生息しており、美味しいお茶づくりと生物多様性が両立しています。国連食糧農業機関(FAO)は2013年に「静岡の茶草場農法」を世界農業遺産に認定しました。